常緑性は温帯・北方系の植物にとって重要な戦略であり、落葉性と同じくらい一般的である。しかしながら、常緑性植物が季節間で葉の機能を切り替えているかどうかは、これまで不明だった。この度、常緑多年草であるシロイヌナズナの葉の老化制御に関する研究が行われた。102の隔週株について4年間にわたり葉の寿命の調査を行った結果、葉の寿命が短いことを特徴とする「成長期」と葉の寿命が長いことを特徴とする「越冬期」が同定され、葉の機能において3つの異なる時期、すなわち「成長期」、「越冬期」、「生殖期」があることがわかった。そして、葉が伸長する間の光周期が「成長期」か「越冬期」かを分けていて、季節によって葉の老化は制御され、冬には葉の老化が停止することが見出された。フィールド実験における表現型とトランスクリプトーム応答から、成長期には日陰による老化誘導が、生殖期には生殖に関係する老化誘導が、それぞれ活発であることが示された。このような葉の老化の二次的制御は、成長期には非同期的な葉の老化を、生殖期には同期的な葉の老化を引き起こす。このような葉の老化の季節的な切り替えは、その季節の資源の生産、貯蔵、移動を最適化し、常緑戦略を有効なものにしている。
常緑性植物は生育期においては光合成を行う力が低下した葉を老化させて置換えることで成長を最大化しつつ、越冬期には葉の老化を停止させて資源の貯蔵を最大化しているということである。この研究で得られた知見は、変動する地球環境の下での農業や生態系管理に必要な情報を提供するものであると考えられている。