ミュラー擬態は、個体群の隔離によって共進化が促される、氷河期の”避難所”における相互主義的関係の一例であると言われている。 擬態の多様性の背後にある集団の遺伝を、擬態を行うマルハナバチBombus breviceps SmithとBombus trifasciatus Smithのペアにおいて調べながら、ゲノムデータを用いた検証が行われた。両系統において、個体群構造は地理に影響されたが、色彩パターンには影響されなかったことから、遺伝子流動が制限された地域では色彩対立遺伝子が共有され、遺伝的分化がない場合には擬態複合体が形成されることが示唆された。個体群統計学的解析の結果、有効個体数の歴史的変化は氷河期のサイクルと一致しなかったが、生態学的ニッチ・モデリングでは、氷河期に生息地がわずかに縮小しただけであった。 さらに、両系統の同じ色彩形態を持つ無形亜集団は、類似した個体群履歴を示し、遺伝的分化は一部のケースにとどまった。
Science Advances誌は、擬態を行うマルハナバチの写真を表紙とし、「この研究は、擬態パターンの進化を理解するための並行モデルを提供し、色彩パターン遺伝学に関する今後の研究に基礎を与えるものである」 とした。