DNA液滴は、DNA配列を人工的に液体状に凝縮したものであり、その性質をプログラム的に利用することができることが知られている。一方、RNAをベースにしたものは、より多様な分子構造や機能を持つにもかかわらず、あまり研究されてこなかった。この度、2入力のAND論理演算が可能な計算RNA液滴の設計と実証が行われた。ここでは、複数の一本鎖RNAからなる多枝RNAナノ構造が構成要素として用いられている。この枝は、RNA特異的なキスループ相互作用に関与し、自らネットワーク状の微細構造へ集合することができる。そして、標的miRNAが2回入力されると、ナノ構造は鎖状に分解するようにプログラムされている。相互作用の強さを塩基レベルでどの程度調整できるのかを数値的および実験的に研究することにより、ウイルス配列から適合させたキスループ配列の最適化が試みれた。すると、同族マイクロRNAを受け取ったときのみ、RNA液滴は、液体から分散状態への劇的な相状態変化を起こすことがわかった。この実証は、多鎖モチーフ設計が、凝縮相の挙動をボトムアップでプログラミングする柔軟な手段を提供することを強く示唆している。このような巨視的な相変化によって、肉眼で識別可能なRNAベースの論理演算子ができるのである。