最近の研究では、刺激と報酬の連合学習の中枢である大脳基底核が社会的行動に関与していることが示唆されている。しかし、社会的情報処理における大脳基底核の役割は依然として不明であった。この度、マカクザルの線条体尾部が、長期的な報酬履歴(すなわち、安定した物体価値)を持つ視覚的対象に敏感であり、社会的に親しみのある人物にも敏感であることが示された。線条体尾部ニューロンの多くは、人物の顔画像、特に被験サルの日常的な世話をしてくれる人物の顔画像に反応した。これらの顔反応性ニューロンは安定物体価値も符号化していた。社会的親近感のニューロン調節の強さと安定物体価値バイアスの強さは正の相関を示した。これらの結果は、社会的親近感と安定物体価値情報の両方が、共通の神経細胞メカニズムによって媒介されていることを示唆している。したがって、社会的情報の表現は、社会的情報専用の回路ではなく、線上体尾部において報酬情報と結びついている。
この研究成果は、脳が社会的な絆を形成し維持するメカニズムの理解を深めるものであり、線条体尾部を含む大脳基底核の障害による疾患(パーキンソン病など)の理解や治療にも役立つ可能性があるという。
プレスリリース
親しい人の顔を学習する神経メカニズムを解明 | 京都大学