農業システムは、窒素肥料に大きく依存している。しかし、合成肥料の生産と過剰使用は、大量の温室効果ガスの排出につながるため、代替的で持続可能な窒素肥料の開発が急務となっている。この度、海洋性光合成細菌 Rhodovulum sulfidophilumの溶解・乾燥細菌バイオマスを、コマツナ栽培の代替窒素肥料として有効利用できるか検証された。約11%の窒素を含むこの加工細菌バイオマスが窒素肥料としてどの程度適性をもつのかを評価するため、2つの異なる温度条件下で、植物の発芽と成長に及ぼす効果を、従来の窒素が含まれるミネラル肥料と比較しながら調べた。この結果、加工細菌バイオマスは、ミネラル肥料の4倍までの施用量であれば、種子の発芽と植物の成長に悪影響を及ぼさず、約2倍の割合を施用することでミネラル肥料と同等の植物の成長を得ることが確認された。これは細菌による窒素の無機化率が62%であるとの予測にほぼ合致する。この結果から、植物が海洋性光合成細菌の溶解・乾燥バイオマスから窒素を取り込むことが可能であると確認された。
この研究成果は、「持続可能な開発目標(SDGs)」のうち、「2.飢餓をゼロに」「11.住み続けられるまちづくりを」「13.気候変動に具体的な対策を」に貢献するものであるという。
プレスリリース
光合成細菌を窒素肥料に | 理化学研究所