「蛇紋岩」は、太古から見られ、微生物のメタン生成と酢酸生成を支える環境となっている。古細菌の中には、メタノセル目(Methanocellales)をはじめとして、メタン生成能力を特徴とするグループがいくつかある。ここでは、カリフォルニア州シーダーズの蛇紋岩化した泉からメタゲノム配列を作成し、メタン生成に必須な遺伝子を欠くメタノセラレス古細菌(Met12と命名)のゲノムを環状に構築した。このゲノムには、メタン生成酵素をコードする遺伝子は欠損している。トランスクリプトーム解析により、多ヘムc型シトクロムが高発現していることが明らかになり、モデル細菌でこのタンパク質を異種発現させると、電子を受け取る能力があることが示された。この結果から、Methanocellales目のMet12はメタン生成菌ではなく、電子分岐を伴わないCO2還元型電子燃料アセト生成菌であることが示唆された。
原著論文
A non-methanogenic archaeon within the order Methanocellales
蛇紋岩化反応が起きる陸域・海底下の地質環境は、初期地球に類似した強アルカリ性・超還元的な極限環境である。「ザ・シダーズ」で湧出する蛇紋岩流体に生息する特殊な微生物の代謝や生存メカニズムを明らかにすることは、マントルと生命圏との関わりや、初期地球の生命進化プロセスの解明に貢献することが期待されている。
プレスリリース
地下深部の極限的な環境に常識外れな古細菌を発見 | 理化学研究所